【 告知:平成27年11月 】
平成27年10月27日の政府税制調査会において「タワーマンションを使った節税対策を放置すると、不公平感が広がり、税への信頼感が失われ、勤労意欲が減退するので、税の取扱いを是正してもらいたい。」との意見がだされました。
これを受けて、国税庁が全国の国税局に対し、タワーマンションを利用した相続税対策への課税を強化するように指示したとの情報もあります。
具体的にどのような場合に追徴課税の対象になるのかは不明ですが、タワーマンションを使った相続税対策への課税が強化される方向で間違いなさそうです。
よって当該対策を行っている方は、今後の通達や法改正には注意が必要です。
平成26年第8号
相続税の大幅増税を平成27年1月1日に控え、相続税の節税対策として高層マンションの活用が注目されています。
高層マンションが節税に有効な理由
高層マンションの相続税評価額は、土地については、全敷地の評価額にその部屋の敷地権(持分割合)を掛けて算出します。通常、マンションは高層であればあるほど部屋数(戸数)が増えるため、結果的に1戸あたりの敷地権(持分)は小さくなり、相続税の評価額も安くなります。
次に建物については、原則として床面積で算出されるため、2階と50階でも床面積が同じであれば評価は同額となります。
結局、タワーマンションの相続税評価では、高層階の眺望等によるプレミアムが一切反映されないため、実際の流通価格(時価)と相続税評価額との間に大きなかい離が発生し、その幅は高層であればあるほど(高額であればあるほど)大きくなります。
例:Aタワーマンション
42階 南向き 80u 販売価格8000万円
21階 東向き 80u 販売価格6500万円
3階 北向き 80u 販売価格4600万円
上記3タイプのマンションの相続税評価額は、「同額」となります。
一概には言えませんが、都心で1億円で販売されている80uの高層階マンションの相続税評価額は、3000万円程度になり、現金で保有する場合と比較して3分の1程度まで評価を下げることができます。
仮にこのタワーマンションを貸家にした場合には、建物部分については3割引き、土地部分については約2割引きとなり、さらに、小規模宅地(貸付事業用宅地)も適用可能ですので、現金保有と比較して5分の1程度まで相続税評価を下げることが可能となります。
但し、タワーマンションを使った節税対策は、節税効果が非常に高い半面、将来、物件価格が下落するリスクもありますので、物件選びは慎重に行う必要があります。
具体的に検討する際には、法務・税務・不動産などの専門家によく相談されることをお勧めします。
平成26年 第9号
相続開始1ヵ月前に約3億円で購入したタワーマンションを、相続税評価5800万円で相続税申告し、相続開始から10ヵ月後に約3億円で売却した事案につき、国税不服審判所は、「マンションの相続税評価額は、路線価の約5800万円が合理的ではなく、購入価格の約3億円が相当である」と判断しました。
この事例の概要は下記のとおりです。
平成19年 7月 被相続人入院
平成19年 8月 被相続人がタワーマンションを2億9300万円で購入
平成19年 9月 被相続人死亡(相続開始)
平成19年11月 相続人名義に相続登記
平成20年 7月 相続人がタワーマンションを2億8500万円で売却
平成20年 7月 相続税申告
※当該マンションを財産評価基本通達に基づき5800万円として相続税申告。
平成21年 税務調査
平成22年 3月 課税処分
※当該マンションは財産評価基本通達に基づく5800万円ではなく、購入価格である29300万円が相当であるとして課税処分。
(判旨)
評価基本通達に基づき本件マンションを評価することは、相続開始前後の短期間に一時的に財産の所有形態がマンションであるにすぎない財産について実際の価値とは大きく乖離して過少に財産を評価することになり、納税者間の実質的な租税負担の平等を害することになるから、上記事情は、評価基本通達によらないことが正当として是認されるような特別の事情に該当するというべきである。
相続財産の価額の評価について、評価基本通達によらないことが正当として是認されるような特別な事情がある場合には、評価基本通達によらず、他の合理的な方式によってこれを評価することが相続税法第22条の法意に照らして当然に許されるものというべきである。
高層マンションを使った相続税の節税対策をする場合の注意点
相続した高層マンションが相続開始の直近に購入した物件であり、購入価格と相続税評価額とのかい離が著しい場合には、相続開始後すぐに売却するのではなく、相続税の税務調査完了まで売却を待ったほうが安全なようです。
是非、ご注意ください。
司法書士・不動産コンサルタント
高 良 実
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