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小規模宅地の特例の改正のご案内!(平成30年改正)
平成30年 第7号

 

小規模宅地の特例は、事業用や居住用の宅地の課税価格を軽減することで、相続人の生活や事業の継続に配慮することを目的として創られた制度です。

 

しかし、相続税の軽減のみを目的とした適用事例が増えてきたことから、下記のとおりの見直し(厳格化)がなされました。

 

なお、下記の改正は、平成30年4月1日以後に開始した相続に適用されます。

 

1.特定居住用宅地の小規模宅地特例について、別居親族に係る小規模宅地の特例に以下の要件が追加されました。

 

(追加された要件:要件厳格化)
イ 相続開始前3年以内に国内にある自己の3親等内の親族または特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと。
ロ 相続開始時に居住している家屋を過去に所有したことがないこと。

 

2.貸付事業用宅地の小規模宅地特例について、以下の要件が追加されました。

 

(追加された要件:要件厳格化)
イ 相続開始前3年超 特定貸付事業を行っている場合
・貸付事業を始めた時期にかかわらず、すべて特例の対象となる。
ロ 相続開始前3年超 特定貸付事業を行っていない場合
・相続開始前3年超前に貸付事業の用に供された宅地等は特例の対象となる。
・相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等は対象とならない。
ハ 上記にかかわらず、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等は特例の対象となる。

 

3.特定居住用宅地の小規模宅地特例について、以下のとおり範囲が拡大されました。

 

(範囲が拡大の内容:要件緩和)
イ 介護医療院入居についても小規模宅地の適用可能となりました。

 

 

 

 

トピックス:土地放棄制度と相続登記義務化を検討  法務省
平成30年 第5号

 

相続などにより所有者がわからない土地が増え社会問題化しています。
原因としては、相続登記の煩雑さ、費用がかかること、土地の価値下落などが考えられます。

 

法務省の研究会は6月1日、所有者不明土地の増加に対処するため、土地の所有権を放棄できるようにする制度の創設や、相続登記の義務化の検討を柱とする中間報告を公表しました。

 

今後、

 

・土地所有者の所有権を放棄できるケース
・放棄の要件や手続き方法
・放棄された所有権の帰属先を国と地方自治体のどちらにするのが適切か

 

などが検討され、2020年までに国会提出を目指す予定です。

 

相続登記の義務化については、相続登記手続の簡略化と共に検討されるとのことですので、近い将来、司法書士や弁護士に依頼しなくても不動産の名義変更が簡単にできるようになるかもしれません。

 

 

 

 

相続税の変遷
平成30年 第3号

 

平成27年1月1日から相続税の基礎控除が40%下がり(最高税率が5%上がり)、それに伴って相続税がかかる人が大幅に増えました。

 

今後、この相続税がどのようになっていくのかは定かではありませんが、日本の現状(国債の発行残高、超高齢化の進行)を鑑みると、下がるよりは上がる方向に進む可能性が高いと思います。

 

以下に、過去30年間の相続税に関する主な改正をご紹介します。

 

 

昭和62年12月31日まで
基礎控除 2000万円+法定相続人×400万円
最高税率 75%

 

昭和63年1月1日以降
基礎控除 4000万円+法定相続人×800万円
最高税率 70%

 

平成4年1月1日以降
基礎控除 4800万円+法定相続人×950万円
最高税率 70%

 

平成6年1月1日以降
基礎控除 5000万円+法定相続人×1000万円
最高税率 70%

 

平成15年1月1日以降
基礎控除 5000万円+法定相続人×1000万円
最高税率 50%

 

平成27年1月1日以降
基礎控除 3000万円+法定相続人×600万円
最高税率 55%

 

※以上のとおり、昭和の終り頃から平成15年頃までは相続税が段階的に下がり、平成15年から平成27年まではほぼ横ばい、平成27年から上昇となっています。

 

 

 

 

相続に関する法律(民法)の改正案
平成30年 第2号

 

法務省は、相続が開始した際の財産分割において、亡くなった人の配偶者の優遇を図る民法の改正案を作成しました。

 

主な内容としては、

 

配偶者が相続開始の際に住んでいた建物に住み続けられる権利を新設する。

 

配偶者が贈与や遺言で住居を取得した場合には、原則として遺産分割の対象とならない。

 

などです。

 

今後、急速に進行する高齢化社会に向け、亡くなった人の配偶者の生活の安定につながる有意義な制度だと思います。

 

このような、相続に関する法律の大幅な見直しは約40年ぶりとなります。

 

今後、改正が予想される相続法の主なポイントは以下のとおりです。

 

(1)被相続人が所有している住居に、配偶者が住み続けられる権利を創設する。その権利を、遺産分割の際、選択肢の一つとして取得できる。

 

(2)夫婦の一方が、配偶者に住居を贈与した場合、婚姻期間が20年以上であれば、原則として、当該不動産を遺産分割の計算対象とはみなさない。

 

(3)自筆証書遺言につき、パソコンでも財産目録を作成できる。また、法務局が自筆証書遺言を保管する制度を創設する。

 

(4)被相続人の介護を、相続人以外の親族が行った場合には、一定の要件を満たせば、相続人に金銭での請求ができる。

 

 

 

 

判例紹介:大学の学費は特別受益になるのか?
平成29年 第14号

 

大阪高裁判決平成19年12月6日

 

1被相続人の家族構成
 被相続人 父
 長女 師範学校を卒業
 二女 高等女学校を卒業
 四女 師範学校を卒業
 長男 ○○大学付属中学に入学し、その後、10年間下宿生活を送り、○○大学法学部を卒業

 

 五女 短期大学を卒業

 

2争いの概要
 長男の教育費(学費+下宿費)とその他4人の教育費には歴然たる差がある
 (長男の学費が圧倒的に多い)ので、長男には特別受益がある。
 と四女が長男を訴えた。

 

3裁判所の判断
 本件の事案では、長男の教育費は、特別受益にはあたらない。仮に特別受益になるとしても、父の長男に対する持ち戻し免除の意思が推定される。

 

4理由
 「父の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般的である。」

 

 

 

 

私は「遺言」を作った方がいいの?
平成29年 第13

 

遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示です。

 

遺言は、死亡した後の自分の財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとすることに大きな目的があります。

 

第1 遺言を作成した方が良い方

 

世の中では、遺言がないために、相続を巡り親族間で争いの起こることが少なくありません。今まで仲の良かった親族が、相続を巡って骨肉の争いを起こすことほど、悲しいことはありません。
1.夫婦の間に子供がいない場合

 

2.子供たちに承継させたい財産をそれぞれ指定したいとき

 

3.長男の嫁や内縁の妻に財産を分けたいとき

 

4.再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合

 

5.個人事業主、農業経営者の場合

 

6.相続人が全くいない場合など

 

第2 遺言書の種類  

 

遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められています。「あの人は、生前こう言っていた。」などと言っても、どうにもなりません。

 

遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方式が定められています。

 

当事務所では、安全確実な方法である『公正証書遺言』の作成をお勧めしております。

 

<公正証書遺言のメリット>

 

1.遺言書の方式の不備で、無効となってしまう危険性がありません。

 

2.原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配がありません。

 

3.遺言者が死亡した後に、家庭裁判所で、検認手続を受ける必要がありません。

 

4.遺言者が高齢で体力が弱り、あるいは病気等のため、公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の自宅又は病院等へ出張して遺言書を作成することもできます。

 

<デメリット>
1.事前に公証役場に、案文を作成し、財産の資料を提出し、打合せをする必要があります。
2.公証人への費用がかかります(通常7〜10万円程 ※財産の価格により変わります)。
3.証人2人の立会いが義務づけられています。

 

第3 当事務所で手続をお受けした場合

 

@ 経験豊富な司法書士が親身になって相談を受けながら、遺言者のご希望を伺い、最善と思われる遺言書の案文を作成いたします。

 

A 当事務所の司法書士と行政書士が証人をさせて頂きます。

 

C ご依頼を頂いてから、ご本人と面談をし、最短1週間で公正証書遺言作成が可能です。(※公証役場の予約状況・出張の有無にもよります。)

 

 

※平成12年1月から、口がきけない方や、耳の聞こえない方でも、公正証書遺言を作成することができるようになりました。
公証人が、病院等に赴いて、口のきけない方などの遺言書を作成することも可能です。
また、公正証書遺言は、耳の聞こえない方のために、通訳人の通訳又は閲覧により、筆記した内容の正確性を確認することができるようになりました。

 

思った時が吉日です!お考えがある早い段階で、公正証書遺言を作成しましょう!
お気軽に当事務所までご相談ください。

 

                           行政書士 横井 貴広

 

 

 

 

亡くなった家族に借金があったら!?
平成29年 第12号

 

「先日、あなたのお父さんが亡くなり、借金が残っています。あなたには支払い義務がありますので、ご連絡ください。」

 

ある日、突然、こんな手紙が届いたら、驚いてあわててしまいますよね。

 

亡くなったご家族に借金があるかも知れない場合は、まずは亡くなった方の財産を把握しましょう。

 

<積極(プラスの)財産>
 現金、預貯金、株式等有価証券、不動産、動産など

 

<消極(マイナスの)財産>
 借金などの債務、保証など

 

調査の結果、マイナスの財産が多く、相続を希望しない場合は以下の点にご注意ください。

 

・相続放棄および限定承認は、自分が相続人であることを知った日から3ヵ月以内にしなければなりません。

 

※家庭裁判所に相続放棄の申述をした場合は、はじめから相続人ではないものとみなされ、プラスの財産、マイナスの財産とも承継しないことになります。

 

・限定承認は、プラスの財産からマイナスの財産を引いて相続し、マイナス財産が多い場合は、自己財産からの支払い義務が免除されますが、相続人全員が共同して行うことが必要です。

 

※家庭裁判所に限定承認の申請をした場合は、相続債務については、相続した財産からのみ返済し、自己の財産から返済する義務はありません。
但し、相続財産の中に不動産がある場合は、みなし譲渡所得税が課されることがありますので注意が必要です。

 

・被相続人の財産を消費・処分等してしまった場合は、原則として相続放棄ができなくなります。

 

・債務が住宅ローンの場合は、保険で弁済されるケースもありますので、金融機関にご確認ください。

 

・債務が消費者金融などによるものの場合、過払い金が発生していることもあります。

 

ご家族に借金があり、あなたが相続人であったとしても、選択する相続手続によっては、必ずしも払わなければいけないものではありません。

 

また、借金を相続してしまい、自力での返済が困難な場合は、債務整理という方法もあります。

 

詳しい、相続手続につきましては、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

 

 

速報! 配偶者の相続分を増やす法改正の試案
平成29年 第11号

 

平成29年7月18日、法制審議会は、遺産分割の際に被相続人の配偶者を優遇する改正試案をまとめました。

 

この試案をうけて、法務省では、8月上旬から約1ヵ月半、意見公募(パブリックコメント)を行い、年内に要綱案をとりまとめた上、来年の通常国会で民法改正案の提出を目指すとのことです。

 

以下に改正案の概要を記載します。

 

・婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に居住用の不動産を、生前贈与または遺贈(遺言による譲渡)した場合、配偶者に贈与された不動産は遺産分割の対象とはならない。

 

※この規定が適用された場合、贈与を受けた配偶者は、住居を取得した上で、その他の遺産についても、2分の1(法定相続分)を相続できることになります。

 

現行の制度では、居住用不動産も遺産分割の対象となります。そのため遺産の中に占める住居用不動産の割合が高い場合などでは、最終的に住居を売却して遺産を分割し、配偶者が住まいを失うというケースもありました。
本制度適用後は、そのような問題は減少すると思われます。

 

今後の改正動向を見守りたいと思います。

 

 

 

 

相続が起こったときに必要となる届け出リスト(お役所編)
平成29年 第10号

 

1.死亡届
  埋葬・火葬許可申請書

 

  ※死亡の事実を知った日から7日以内
   通常は葬儀社が代行して申請します。

 

2.住民票の世帯主変更届
  ※14日以内。届け出が不要なケースもありますので、事前に役所に確認
   したほうがよいでしょう。

 

3.国民健康保険の方
  資格喪失届 14日以内
  葬祭費   2年以内
  ※住所地の市区町村役場

 

  健康保険の方
  資格喪失届 5日以内
  埋葬料   2年以内
  ※年金事務所

 

4.高額療養費の払戻し
  2年以内

 

5.国民年金の方
  死亡届 14日以内
  未支給年金請求 5年以内
  遺族基礎年金 5年以内
  寡婦年金   5年以内
  死亡一時金  2年以内

 

  厚生年金の方
  死亡届 10日以内
  未支給年金請求 5年以内
  遺族厚生年金  5年以内

 

6.所得税の準確定申告 4ヵ月以内

 

7.相続税の申告・納税
  相続開始日の翌日から10ヵ月以内

 

 

 

 

判例紹介:遺族補償年金の受給要件(妻は年齢要件なし、夫は60歳以上であることが要件)の適法性について
平成29年 第5号

 

平成29年3月21日 最高裁判所判決 平成27(行ツ)375号

 

(事案)
平成10年に地方公務員である妻が死亡し、後に公務災害として認定されたが、妻の死亡当時、夫が51歳であったため、遺族補償年金の受給要件(夫の場合は妻死亡時に60歳以上であることが要件)に該当せず、夫に遺族補償年金が支給されなかった。

 

そこで、夫は、遺族補償年金の受給要件が、「妻が受給する場合には年齢要件がない」のに対し、「夫が受給する場合には年齢要件(60歳以上)がある」のは憲法14条1項の法の下の平等に違反するとして争った。

 

(最終的な結論)

 

遺族補償年金の受給要件は憲法14条1項に違反しない。

 

【判決の内容】

 

第1審(地方裁判所判決)

 

第1審(地方裁判所)は、妻と夫とで受給要件に差異を設けるのは、不合理な差別的取り扱いであり、この規定を違憲として不支給決定を取り消した。

 

  ↓

 

第2審(高等裁判所)

 

第2審(高等裁判所)は、現在の男性と女性の労働環境や賃金等の差異から、妻を亡くした夫が独力で生計を維持できなくなる可能性は、夫を亡くした妻にくらべ著しく低いことなどから、この規定は合理的であり、違憲ではないとした。

 

  ↓

 

第3審(最高裁判所)

 

第3審(最高裁判所)は、「男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い」、「平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況」に鑑み、妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは、〜〜合理的な理由を欠くものということはできない。

 

したがって、〜〜死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。

 

(参考)

 

地方公務員災害補償法
第32条(遺族補償年金)第1項 (要旨)

 

遺族補償年金を受けることができる遺族は、職員の配偶者(事実婚を含む)、子父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、職員の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとする。ただし、妻以外の者にあっては、職員の死亡の当時次に掲げる要件に該当した場合に限る。

 

1 夫、父母、祖父母については60歳以上であること。

 

※上記の他、子・兄弟姉妹の年齢要件、年齢要件に該当しない障害者に関する特則、胎児に関する特則、遺族補償年金を受けるべき遺族の順位(配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順)に関する規定があります。

 

 

 

 

相続分の譲渡・その活用法
平成29年 第3号

 

1.相続分の譲渡とは、「遺産全体に対する相続人の有する包括的な持分又は法律上の地位」を譲受人に譲渡することです。

 

相続分を譲渡したときは、譲渡した相続人が有していた積極財産(プラスの財産)と消極財産(債務等マイナスの財産)が譲受人に移転することになります。

 

※但し、消極財産が譲受人に移転したことを債権者に主張することは、債権者の承諾がない限り、原則としてできません。

 

2.相続分譲渡に関する判例(最高裁平成13年7月10日判例)

 

共同相続人間で相続分の譲渡が行われたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。

 

3.多数当事者がいる場合の相続分譲渡の活用

 

例えば相続人が数十人もいるような相続の場合、他の相続人へ相続分譲渡をすることにより当事者を減らしていくことができます。

 

遺産分割協議による場合は、相続人全員の合意がない限り、分割の効力は一切発生しないのに対して、相続分譲渡では譲渡人と譲受人との間の合意によって、相続権移転の効力が発生しますので、着実に手続を進めていくことができます。

 

但し、相続分譲渡では、遺産を構成する個々の財産を移転することはできず、あくまでも「積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分」しか移転できませんので、活用する際は注意が必要です。

 

 

 

 

判例紹介:共同相続された普通預金・定期預金は遺産分割の対象となります。
平成29年 第2号

 

複数の相続人が預貯金を共同相続した場合、この預貯金は法定相続分に応じて当然に分割され、遺産分割の対象とはならないとするのがこれまでの裁判例でした。

 

よって、相続人間で遺産分割協議が整わない場合でも、預貯金については各法定相続人が各法定相続分に基づいて払戻しを受けることができました。

 

しかし、今回、最高裁判所の大法廷ではこれまでの裁判例を変更し、「共同相続された普通預金、通常貯金、定期貯金は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と判断しました。
(平成28年12月19日 最高裁判所大法廷決定 平成27(許)11号)

 

この裁判例により、今後は、遺産分割協議が整わない状態では法定相続人全員からの申請でなければ、預金の払戻しを受けることが難しくなります。また、そのことが原因で相続税の納税が困難になるケースも増えてくると思われます。

 

遺言書を作成して預貯金の相続人が確定している場合には、遺産分割協議は不要となり、遺言執行者によって預金の払戻しを受けることができます。

 

そのため、将来、相続で争いが起きる可能性がある場合には、争いを防ぐ点からも遺言書を作成されることをお勧めいたします。

 

 

 

 

平成29年度の与党税制改正大綱
平成29年 第1号

 

与党は、平成28年12月8日、本年度の税制改正大綱を決定しました。

 

資産税の主な改正案

 

1.海外居住者に対する相続税・贈与税の課税の強化

 

国外財産が相続税の課税対象外とされる要件(非居住期間)を、現行の5年から10年に変更

 

2.タワーマンションに対する固定資産税の課税の強化

 

適用対象
高さ60m超のマンション
建物の固定資産税評価額
50階の場合→ 25階は変わらず、1階は6%減、50階は6%増
土地の評価額は影響なし

 

3.取引相場のない株式の評価方法の見直し

 

4.広大地の相続税評価方法の見直し(課税強化)

 

改正前 路線価×面積×広大地補正率
改正案 路線価×面積×奥行価格補正率・不整形補正率等
    ×規模格差補正率

 

5.非上場株式→ 相続税の納税猶予制度の見直し

 

6.相続税の物納制度の順位・範囲の見直し

 

上場されている株式、社債、証券投資信託等の受益証券を国債・不動産等と同順位(第一順位)とする。

 

 

 

 

相続人の排除とは?
平成28年 第7号

 

子が親に対して暴力を振るったり、重大な侮辱を繰り返したした場合など、その子に財産を相続させることを、親である被相続人が望まない場合には、家庭裁判所に申立を行い、その相続人の相続権をはく奪することができます。
この制度を「相続人の排除」といいます。

 

1.排除するための要件

 

(1)被相続人に対する虐待や重大な侮辱などがあった場合
(2)著しい非行があった場合

 

2.排除の方法

 

(1)被相続人の生存中であれば、被相続人が自己の住所地の家庭裁判所に申立を行う。

 

(2)遺言により排除の意思表示をした場合には、被相続人の死後、遺言執行者が相続開始地を管轄する家庭裁判所に対して排除の申立を行う。

 

上記の申立があると、家庭裁判所は、排除事由の存在、被相続人の意思、相続人の改心など、諸般の事情を総合的に考慮して排除が相当かどうかを決定します。

 

 

3.排除の効果

 

排除が確定すると、その相続人は相続権をはく奪され、財産等を相続することができなくなります。

 

但し、排除による相続権の喪失は、申立人(被相続人)と被排除者との間でのみ発生するので、仮に、被排除者に子がいる場合には、その子は被相続人の代襲相続人となることができます。

 

 

 

 

遺言書の種類とそれぞれの遺言書のメリット・デメリット
平成28年 第5号

 

相続税法の(増額)改正や相続に関する紛争の増加から、近年、遺言書の作成を検討されている方が増えてきています。

 

遺言書には大きく分けて3つの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。遺言書の作成をお考えの方は、それぞれの特徴をよく理解した上で遺言書を作成されることをお勧めします。

 

以下にそれぞれの遺言書の特徴を記載いたします。

 

1.自筆証書遺言

 

作成方法・・・遺言者が全文、日付、氏名を自署し、押印して作成します。

 

メリット・・・自分で作成するので簡単に作成できる。
       費用がかからない。

 

デメリット・・偽造・変造・隠匿・紛失のおそれがある。
       方式違背により無効となるおそれがある。
       裁判所での検認手続が必要となる。

 

2.秘密証書遺言

 

作成方法・・・遺言者本人が作成(又は代筆者が代筆)し、封印した状態で公証人に提出し、公証人が本人のものであることを確認する方法により作成します。但し、遺言書の内容については公証人は確認しないので、無効な遺言が作成される可能性もあります。

 

メリット・・・ワープロでも作成できる。

 

デメリット・・隠匿・紛失のおそれがある。
       方式違背により無効となる可能性がある。
       裁判所での検認手続が必要となる。

 

3.公正証書遺言

 

作成方法・・・証人2人の立会いのもと公証人により作成します。

 

メリット・・・偽造・変造・隠匿・紛失のおそれがない。方式違背により無効となるおそれがない。

 

デメリット・・公証人手数料がかかる。
       財産額5000万円で約5万円〜10万円

 

遺言書は相続人に対する最後の意思表示であり、自己の財産の取得者を決める重要な書類ですので、安全性・確実性の面から公正証書による遺言の作成をおすすめします。

 

 

 

 

相続人の中に行方不明者がいる場合の手続方法
平成28年 第4号

 

相続人の中に行方不明者や生死不明の人がいる場合には、遺産分割協議を進めることができず、そのままでは不動産の処分や被相続人の預金を引き出すことができません。

 

このような場合は、以下の手続をとることによって相続の手続を進めることができます。

 

1.家庭裁判所に対して「不在者の財産管理人選任申立」を行う。

 

家庭裁判所により選任された財産管理人は、不在者の財産を保管・管理する権限を有します。しかし、この財産管理人は、財産を処分する権限はありませんので、当然には遺産分割協議に参加することができません。

 

不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するためには、更に以下の手続を行う必要があります。

 

  ↓

 

2.家庭裁判所に対して「権限外許可の申立」を行う。

 

家庭裁判所に遺産分割協議書(案)を提出し、不在者財産管理人が当該協議書案)に基づいて分割協議を締結する許可を受けます。

 

この許可が出ると不在者財産管理人とその他の相続人間において遺産分割協議を成立させることができます。

 

上記のとおり、相続人の中に行方不明者がいる場合でも一定の手続を執れば相続手続を行うことができます。

 

しかし、これらの手続を行うには、手続費用や半年以上の期間を要することになりますので、このような可能性が予想される場合は、遺産分割協議自体が不要となるよう「遺言書」を作成しておくことをお勧めします。

 

 

 

 

判例紹介 書面全体に斜線をひいた自筆証書遺言の効力
平成28年 第3号

 

【事案の概要】
1.昭和61年6月22日、Aは「大半の財産を特定の相続人に相続させる」とする内容の自筆証書遺言を作成した。

 

2.平成14年5月にA死亡。

 

A死亡後に、相続人が経営する医院の麻薬保管庫から自筆証書遺言が発見された。その遺言書は、発見当時既に開封ずみで、用紙全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が引かれていたが判読は可能の状態だった。

 

さて、この遺言書の効力は?

 

3.第一審(地方裁判所)と第二審(高等裁判所)は、「遺言書に故意に斜線を引く行為は、民法1024条により遺言を撤回したとみなされる「故意に遺言書を破棄したとき」に該当しないとして、遺言書は有効と判断した。

 

4.しかし、最高裁判所は、「本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当である〜〜〜以上によれば、本件遺言書に故意に斜線を引く行為は、民法1024条所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当する。」として本件遺言書は効力を有しないと判断した。

 

 

 

 

平成28年 第1号

 

平成27年12月16日、最高裁判所大法廷は、現行法(民法733条第1項)で定められている「女性は離婚成立から6ヵ月経過後でなければ再婚することができない」との規定を、「再婚禁止期間のうち、100日を超える部分は法の下の平等や婚姻の自由を保障した憲法に違反している」と判断しました。

 

これを受けて、今年中には、「再婚禁止期間を100日」とする改正案が提出され、民法が改正されると思われます。

 

民法733条(現行)
1項 女は、前婚の解消または取消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

 

2項 女が前婚の解消または取消しの日から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

 

 

 

 

他人に貸している土地(借地)の整理と相続税対策
平成27年 第9号

 

1.平成27年1月1日より相続税の基礎控除が4割引き下げられ、相続税対策はますます重要になってきています。

 

相続財産の中でも特に借地(底地)は、「収益性が低い」「利用ができない」「売却が困難」「流通価値にくらべて相続税評価が高い」などの理由で問題があり、相続税が不安な方は、何らかの対策を検討する必要があります。

 

2.具体的な底地の整理法として、以下のような方法が考えられます。

 

(1)底地を借地人に売却する。

 

一番オーソドックスな整理方法です。売却価格は、時価×借地権割合で算出するケースが多いようです。

 

(2)借地人から借地権を買い取る。

 

   購入価格は上記と同様です。

 

(3)底地を第三者に売却する。

 

通常は底地買取の専門業者に売却することが多いと思われますが、業者の買取価格は時価×10%程度と非常に低くなります。

 

一番簡易に処分できますが、正直なところ、あまりお勧めできない処分方法です。

 

(4)借地人と共同で土地を第三者に売却する。

 

この場合、土地を通常の所有権として売却できるため、底地権者、借地権者とも取得額が最も高くなります。

 

(5)借地権と底地権を交換し、それぞれが完全な所有権者となる。

 

交換価格については借地権割合を参考に算出するケースが多いようです。一定の条件を満たせば「固定資産の交換特例」を適用することで、双方に譲渡所得税がからなくなります。

 

(6)借地権と底地権をディベロッパーに提供し、それぞれがビルの共有持分を取得する。

 

最近、適用事例が増えている整理方法です。借地権者、底地権者とも新築のビル持分を取得することになるため、資産価値を大幅に増加させることができます。

 

 

 

 

相続の時に必要となる手続例
平成27年 第8号

 

1.死亡届の届出・火葬許可証の取得 ○
    期限 死亡の事実を知ってから7日以内
2.相続放棄・限定承認の申述 △
    期限 相続人となったのを知ってから3ヵ月以内
3.被相続人の所得税の確定申告 △
    期限 相続の開始があったのを知った日の翌日から4ヵ月以内
4.相続税の申告と納税 △
    期限 相続の開始があったのを知った日の翌日から10ヵ月以内
5.住民票の世帯主変更届 △
    期限 14日以内
6.不動産の名義変更 △
    期限 遺産分割協議後なるべく早く
7.健康保険証の返却 ○
    期限 5日〜14日以内
8.自動車の移転登録 △
    期限 遺産分割協議後
9.預貯金・株式の名義変更 △
    期限 遺産分割協議後なるべく早く
10.生命保険金の請求 △
    期限 2年以内(なるべく早く)
11.死亡退職金の請求 △
    期限 なるべく早く
12.電気・ガス・水道の使用者変更 △
    期限 なるべく早く
13.埋葬料・葬祭費の請求 ○
    期限 2年以内(なるべく早く)
14.未支給年金・遺族年金の請求 ○
    期限 5年以内(なるべく早く)
15.高額療養費の請求 △
    期限 2年以内(なるべく早く)
16.自筆証書遺言がある場合の検認手続 △
    期限 遺言書発見後なるべく早く

 

※上記のうち、○は原則として全ての方が、△は該当する方のみが必要な手続となります。

 

 

 

 

死亡から納骨に至るまでの手続の流れと必要書類
平成27年 第5号

 

1.臨終

 

  医師作成による「死亡診断書」の交付

 

 

2.遺体の搬送と安置

 

  霊柩車・自家用車による遺体の搬送

 

 

3.葬儀の打合せ等

 

  市区町村役場に対して「死亡届」「死亡診断書」「火葬許可申請書」を提出

 

 

4.市区町村役場から「火葬許可証」を受領

 

 

5.納棺

 

 

6.通夜

 

 

7.葬儀・告別式・初七日法要

 

 

8.出棺

 

 

9.火葬

 

火葬場の担当者に対し「火葬許可証」を提出

 

火葬場の担当者から「火葬の日時が記載された火葬許可証」を受領

 

 

10.納骨

 

墓地の担当者に対し「火葬の日時が記載された火葬許可証」を提出し、墓地に遺骨を埋蔵。

 

 

 

 

遺産分割は、二次相続まで考えて行いましょう。
平成27年 第2号

 

二次相続とは、夫が亡くなり(一次相続)、妻と子供が相続した後で、妻が亡くなった際の相続(二次相続)のことを言います。

 

一般的に二次相続では、下記二つの特例が活用できないことが多く、結果的に相続税が増える傾向にあります。

 

 @配偶者の税額軽減の特例
 A小規模宅地の評価減の特例

 

上記2つの特例は、@が「配偶者が相続した財産の内1億6000万円までは相続税がかからない」、Aが「居住用宅地の内330uの部分について評価が8割減される」など、その節税効果は非常に大きなものになります。

 

上記Aの小規模宅地の特例については、配偶者でなくとも要件に合致した相続人がいれば適用することができますが、@については配偶者しか適用できないため、二次相続では活用することができません。

 

その為、ある程度資産をお持ちの配偶者が夫の財産を単独相続した場合など、二次相続で思わぬ高額の相続税が課せられる可能性があります。

 

相続税は、平成27年1月1日に大増税されたばかりですが、現在の日本の危機的財政状況を考えると、今後さらなる増税が強く予想されますので、遺産分割の際は、一次相続だけではなく、二次相続も見据えた上で分割することをお勧めします。

 

 

 

 

平成27年1月1日より、相続時精算課税制度の適用範囲が拡大されます。
平成26年 第15号

 

相続時精算課税制度は、現行では、その年の1月1日現在65歳以上の親から、その年の1月1日現在20歳以上の子(又は推定相続人)に対する贈与につき適用となりますが、平成27年1月1日以降は、贈与者の年齢が60歳に引き下げられると共に、祖父母からの贈与も適用可能となります。

 

平成27年以降の、相続時精算課税制度の適用要件は以下のとおりです。

 

贈与者 60歳以上の父母または祖父母

 

受贈者 20歳以上の推定相続人または孫

 

控除額 非課税枠は2500万円まで

 

税 率 非課税枠(2500万円)までは贈与税ゼロ。2500万円を超過する部分は一律20%の贈与税課税。

 

相続時 相続発生時は、本制度適用(贈与)財産を贈与時の価額で相続財産に加算し、相続税として精算(課税・納税)。

 

但し、非課税枠を超過した部分に対して既に支払った贈与税があれば、当該贈与税は還付される。

 

※この制度を一旦適用すると、通常の暦年贈与に戻ることはできません。
※この制度は、贈与者、受贈者ごとに適用されます。贈与者・受贈者ごとに選択することが可能です。
例:父親→子Aは相続時精算課税制度、母親→子Aは通常の暦年贈与。
  父親→長男Aは相続時精算課税制度、父親→二男Bは通常の暦年贈与。
※この制度を選択する場合は、贈与を受けた翌年の3月15日までに税務署に「選択届出書」を提出する必要があります。

 

 

 

 

遺産分割後の相続登記はお早めに!
平成26年 第7号

 

不動産を購入した人が、第三者に対してその不動産の所有権を主張するためには、自己の名義に登記をする必要があります。これを「登記の対抗力」といいます。
(民法177条)

 

この登記の対抗力は、遺産分割によって不動産を取得した場合にも適用されます。
そのため、遺産分割協議によって、法定相続分を超える不動産(持分)を取得した相続人は、登記をしなければ、その権利を第三者に主張することができません。

 

仮に、遺産分割成立後〜相続登記前に他の相続人の債権者が分割協議の対象となった不動産に差押をすると、分割協議によって不動産全部を取得した相続人は、自己の完全な権利を債権者に主張することができなくなる可能性があります。

 

不動産について遺産分割協議が成立したときは、なるべく早めに登記をされることをお勧めします。

 

 

 

 

自分で手軽に作れる自筆証書遺言
平成26年 第6号

 

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文を自分で書き、これに押印して作成する遺言です。

 

この自筆証書遺言は、公証人の手を借りずに自分で作成するので、いつでもどこでも作成でき、極めて簡単に作れるというメリットがあります。

 

しかし、その反面、民法で決められた要件に合致していなかったり、内容が不明確などの理由で無効になってしまうなどのデメリットがあります。

 

 以下に自筆証書遺言を作成する際の民法上の要件を記載します。

 

1.遺言全文の自書
  ※遺言の全文を遺言者が自書(自分で手書き)しなければなりません。

 

2.日付の自書
  ※作成日を明確にするために、作成した「年・月・日」を記載します。

 

3.氏名の自書

 

4.押印
  ※印章の種類には特に制限はありませんが、できれば実印を押印したほうがよいでしょう。

 

上記の形式的要件の他、内容についても、文言の解釈をめぐって後日争いにならないよう明確に記載する必要があります。

 

 

 

 

遺留分減殺請求に関する最高裁判例
平成26年 第5号

 

最高裁判所平成10年9月26日判決

 

判決の主な内容

 

1.相続人に対する遺贈を原因として遺留分減殺請求をする場合は、その遺贈のうち、受遺者である相続人の「遺留分額を超える部分のみ」が、遺留分減殺請求の対象となる。

 

2.遺留分を侵害している複数の相続人のうち、誰に対して減殺請求するかは「すべての受遺者の遺留分侵害額を基準に按分計算された減殺割合に基づいている限り」請求者の自由である。

 

 

 

 

平成26年度政府税制改正大綱
平成26年 第1号

 

昨年12月、政府は平成26年度税制改正大綱を決定しました。改正内容としてはデフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置、地方法人課税の是正、給与所得控除の見直し、復興支援のための税制上の措置などが盛り込まれています。

 

以下に相続税の取得費加算に関する改正案のポイントをお伝えします。

 

1.相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し

 

相続人Aさんが、相続した土地の一部を売却した場合に、現行では、Aさんが相続した土地全部に対応する相続税相当額がその土地の取得費として加算されるのに対し、平成27年1月1日以後に開始する相続により取得した土地を売却する場合は、譲渡した土地に対応する相続税相当額しか土地の取得費として加算できなくなりました。

 

上記の結果、広大な土地を長男一人が相続し、土地の一部を売却して相続税を捻出するようなケースでは、売却に伴う譲渡取得税が大幅に増える可能性がありますので注意が必要です。

 

 

 

 

相続の各手続の期限例
平成25年 第16号

 

相続が発生すると様々な手続が必要となります。その手続の中には、いつまでにしなければ「請求ができなくなる」または「加算税が課せられる」など、一定の不利益が発生するものがあります。

 

特に、相続発生から3ヵ月以内の相続放棄は、被相続人に多額の負債がある場合など特に重要となります。

 

以下に相続手続の期限の一例をご紹介いたします。

 

相続発生から

 

7日以内
 ・死亡届の提出
 ・埋葬許可証

 

14日以内
 ・世帯主変更届

 

3ヵ月以内
 ・相続放棄、限定承認の手続

 

4ヵ月以内
 ・被相続人の所得税の準確定申告

 

10ヵ月以内
 ・相続税の申告・納税

 

2年以内
 ・葬祭費、埋葬料の請求
 ・高額療養費の請求
 ・国民年金死亡一時金の請求

 

3年以内
 ・各保険金の請求

 

5年以内
 ・遺族年金等の請求
 ・未支給年金の請求

 

 

 

 

婚外子の相続差別規定は「違憲であり無効」
平成25年 第13号

 

平成25年9月4日、最高裁判所大法廷は、婚姻外の子の相続分を婚姻上の子の2分の1とする民法の規定を「無効」と判断しました。

 

この決定により、今後は婚姻上の子、婚姻外の子とも同じ相続分になります。また、過去に発生した相続への影響については、下記のような判断がなされているので注意が必要です。

 

第1 決定の概要

 

1 平成13年7月に死亡した甲の遺産につき、甲の嫡出子(婚姻上の子)が、甲の非嫡出子(婚姻外の子)に対し,遺産の分割の審判を申し立てた事件。

 

2 非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号但書の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反しており無効である。

 

第2 この決定がいつから適用されるかについて

 

1 本決定は、民法900条4号但書の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものである。

 

2 平成7年大法廷決定並びに小法廷判決・決定が、平成13年7月より前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での民法900条4号但書の規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。

 

3 民法900条4号但書の規定は、平成13年7月以降は無効である。

 

4 本決定の違憲判断は、甲の相続の開始時(平成13年7月)から本決定までの間に開始された他の相続につき、民法900条4号但書の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

 

 

 

 

遺言で法的に効力が生じる事項
平成25年 第10号

 

遺言書には何でも書くことができますが、書いたうえで法的に効力が発生する事項は法律で定められています。

 

例えば、「死後、妻に全財産を相続させる。」という遺言は効力を有しますが、「死後、養子との養子縁組を解消する。」という遺言は効力を有しません。

 

以下に、遺言により法的に効力を有する遺言事項をご紹介いたします。

 

1.子の認知

 

2.未成年者の後見人・後見監督人の指定

 

3.相続財産の相続人以外への遺贈

 

4.相続財産の寄付

 

5.信託の設定

 

6.各相続人の相続分の指定・第三者に対する指定の委託

 

7.遺産分割方法の指定・第三者に対する指定の委託

 

8.5年以内の遺産分割の禁止

 

9.相続人相互の担保責任の指定

 

10.特別受益の持ち戻しの免除

 

11.相続人の排除・排除の取り消し

 

12.遺言執行者の指定・第三者に対する指定の委託

 

13.祭祀承継者の指定

 

 

 

 

贈与税改正後の実効税率
平成25年 第9号

 

平成27年1月1日以降、「父母・祖父母」から「20歳以上の子・孫」への贈与は税率が低くなります。これと時期を同じくして、相続税が大幅に増えることが見込まれています。

 

そのため、今後、相続税がかかることが予想される方は、相続税の限界税率と贈与税の実効税率を比較しながら、効果的な贈与を行うことがより重要となってきます。

 

平成27年以降の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与税の実効税率

 

(贈与額)     (贈与税額)      (実効税率)
〜110万円           0円
 500万円     48万5000円     9.7%
1000万円    177万円        17.7%
2000万円    585万5000円    29.3%
3000万円   1035万5000円    34.5%
5000万円   2049万5000円    41.0%

 

 

 

 

平成25年度 相続税改正のポイント
平成25年 第7号

 

1.相続税の基礎控除の縮小(平成27年1月1日〜)

 

現行 5000万円+法定相続人×1000万円

 

改正 3000万円+法定相続人×600万円

 

2.相続税の最高税率の引き上げ(平成27年1月1日〜)

 

     〜1000万円・・・10%

 

1000万円〜3000万円・・・15%

 

3000万円〜5000万円・・・20%

 

5000万円〜   1億円・・・30%

 

   1億円〜   2億円・・・40%

 

   2億円〜   3億円・・・45%(5%UP)

 

   3億円〜   6億円・・・50%

 

   6億円〜      ・・・55%(5%UP)

 

3.小規模宅地の特例の適用拡大

 

居住用宅地の特例の面積拡大
240u → 330u(80%評価減)(平成27年1月1日〜)

 

特定事業用宅地と居住用宅地の併用可能
330u + 400u =730u(80%評価減)(平成27年1月1日〜)

 

二世帯住宅でも小規模宅地の適用可能(平成26年1月1日〜)

 

老人ホーム入居でも小規模宅地の適用可能(平成26年1月1日〜)

 

 

 

 

平成25年度税制改正の大綱の概要
平成25年 第3号

 

平成25年1月29日閣議決定により、平成25年度税制改正大綱が策定されました。

 

以下に相続税に関する主な改正部分をご紹介します。

 

1.相続財産の基礎控除を、現行の「5000万円+法定相続人×1000万円」から「3000万円+法定相続人×600万円」に縮小する。

 

※平成27年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

2.相続税率を、「2億円超から3億円までの部分を40%から45%に」、「6億円超の部分を50%から55%に」それぞれ引き上げる。

 

※平成27年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

3.居住用宅地の特例(小規模宅地)の上限面積を現行の「240u」から「330u」に拡大する。

 

※平成27年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

4.特定事業用宅地の特例(400u)と居住用宅地の特例(330u)の併用適用を認める。(730uまで適用可能となります。)

 

※貸付事業用宅地については、併用適用ではなく現行どおりの調整となります。

 

※平成27年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

5.二世帯住宅で構造上区分している建物の敷地について、被相続人及びその親族が各独立の部分に居住していた場合には、その親族が相続(または遺贈)により取得した宅地のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。

 

※平成26年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

6.老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地は、次の要件がみたされている限り、特例の対象とする。

 

@被相続人に介護が必要なため入所したもの

 

A当該家屋が貸付等の用途に供されていないこと

 

※平成26年1月1日以後に開始する相続について適用されます。

 

 

 

 

相続が起こった時に、まず確認すべき事項。
相続の最新情報!平成24年 第12号

 

1.遺言があるかどうか。

 

※遺言があると各相続人の相続分が変わります。手書きの遺言の場合は、裁判所での検認が必要となります。

 

2.債務があるかどうか。

 

※債務がプラスの財産より多い場合には、相続放棄を検討する必要があります。債務の存在を知らずに財産を使ってしまうと、放棄ができなくなるおそれがあります。

 

相続放棄は原則として相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内にする必要があります。

 

3.相続税がかかるかどうか。

 

※相続財産の総額が基礎控除(5000万円+法定相続人数×1000万円)を超える場合には相続税がかかる可能性があります。

 

相続税がかかる場合には、原則として相続開始から10ヶ月以内に相続税を納める必要があります。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第11号
子の借金から親の相続財産を守るには??

 

鈴木太郎(78歳)さんには、長男一郎、次男二郎の2人の子供がいます。太郎さんの財産は約1億円、長男一郎は無借金ですが、次男二郎には2億円の借金があります。

 

太郎さんと2人の子供達は、太郎さんが亡くなった後で1億円の相続財産が二郎の債権者に取られることがないよう様々な方法を検討しています。

 

第1案 とくに遺言は作成しないで、一郎と二郎により「全財産は一郎が相続する」との「遺産分割協議」をした場合

 

この場合、二郎の債権者は、債権者を害する目的で遺産分割協議をしたとして裁判所に遺産分割協議の取消しを求めることができます(最高裁平成11年6月11日判決)。

 

これを「詐害行為取消権」といいます(民法424条)。

 

※但し、債権者の主張が認められるためにはいくつかの要件があります。この案では財産を守ることはできそうにありません。

 

第2案 とくに遺言は作成しないで、相続発生後に二郎が「相続放棄」をした場合

 

この場合、二郎の債権者は、債権者を害する目的で相続放棄をしたとして相続放棄の取消しを裁判所に求めることはできません(最高裁昭和49年9月20日判決)。

 

最高裁判所は、「相続放棄は身分行為なので詐害行為取消権の対象外」であると判断し、債権者の主張を退けました。

 

※相続放棄には「相続人となったことを知ったときから3ヶ月間」の期限があります。

 

この案では、二郎が3ヶ月以内に相続放棄をすれば、財産を守ることができそうです。

 

第3案 「全財産は一郎に相続させる」との「遺言書を作成」した場合

 

この場合、二郎には4分の1の遺留分があります。この遺留分の権利を二郎に代わって二郎の債権者が請求することはできるのでしょうか?

 

最高裁判所は、「遺留分減殺請求権は、相続人の一身に専属する権利であるので、債権者が本人に代わって請求することはできない」と判断し債権者の主張を退けました(最高裁平成13年11月22日)。

 

この案では、遺言書を作成し、且つ、二郎が遺留分の請求をしなければ財産を守ることができそうです。

 

このように、遺言、相続放棄を活用することにより、子の借金(債権者)から相続財産を守ることができます。これは、子の借金を親が相続する場合も同様です。

 

但し、相続放棄には3ヶ月の期限があり、遺言にも一定の要件がありますので、いざその時になって慌てることがないよう、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第10号
社会保障と税の一体改革関連法案(速報)

 

平成24年6月26日、社会保障と税の一体改革関連法案が、衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。

 

今回、衆議院で可決された主な法案です。

 

1.消費税
  消費税率を2014年4月に8%、15年に10%に引き上げ。

 

2.年金制度改革
  受給資格期間を25年から10年に短縮。
  厚生年金と共済年金の一元化。
  会社員の女性の産休中の厚生年金保険料を免除。
  パート労働者の厚生年金加入25万人増。
  ※従業員500人超の大企業に限り、週20時間以上、月収8.8万円以上

 

3.認定こども園
  幼保の機能を併せ持つ現行制度を拡充。

 

なお、「所得税・相続税」の増税については、年末の税制改正で再び協議することになりました。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第9号
相続発生から遺産分割までの間に発生した賃料の帰属

 

被相続人がアパート、貸駐車場などの収益用不動産を所有していた場合、相続発生から遺産分割までの賃料は誰のものになるのか?

 

上記につき、平成17年9月8日最高裁判決は次のとおり判断しました。

 

「相続開始から遺産分割までの間に相続不動産から生ずる賃料は、各共同相続人がその相続分に応じて確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。(遺産分割でその不動産を単独取得した相続人のものにはならない)」

 

所得税の申告においては、未分割の賃貸不動産から生じる所得を法定相続分であん分した金額が各相続人の所得となります。

 

その後、遺産分割協議が成立し、特定の相続人が取得することが確定した場合には、その年分から、その相続人の取得として申告することになります。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第8号
贈与にならない保険の加入方法

 

生命保険は、保険料負担者、被保険者、保険受取人が誰であるかによって、受取人に対してかかる税金が、所得税になったり、贈与税になったり、相続税になったりします。

 

通常は相続税、所得税、贈与税の順に税金が高くなりますが、所得税(一時所得)には特別控除額(益金−50万×2分の1=課税額)がありますので、場合によっては相続税よりも所得税のほうが税金が安くなることもあります。

 

相続税の節税対策として生命保険を利用する際には、受取人にどのような税がかかるのかをよく検討した上で加入することが大切になります。

 

生命保険の加入パターン

 

保険料負担者  被保険者  保険金受取人  保険金の種類  課せられる税金

 

@  夫       夫     夫       満期保険金   所得税

 

A  夫      夫又は妻   妻       満期保険金   贈与税

 

B  母       母     子       死亡保険金   相続税

 

C  子       母     子       死亡保険金   所得税

 

D  母       父     子       死亡保険金   贈与税

 

※贈与税は1000万円を超えると税率が50%と非常に高額になります。保険に加入する際には、贈与税がかからないよう十分ご注意ください。

 

 

 

 

非嫡出子(未婚で生まれた子)の相続分

 

結婚していない男女間の子(非嫡出子)の相続分は、結婚した男女間の子(嫡出子)の相続分の2分の1と民法に規定されています。

 

この規定をめぐっては、1995年に最高裁で合憲判決が出ましたが、2011年、大阪高裁が、家族関係のあり方が変化したことなどを理由に違憲とする決定を出しました。

 

そして今回、2012年2月、名古屋高裁は「出生時に嫡出子がいない男女間に生まれた非嫡出子に民法の規定を適用するのは法の下の平等を定めた憲法に違反する」として違憲判断を示し、そのうえでその後生まれた嫡出子と等しい相続分を認める判決を言い渡しました。

 

生まれた子供にとって親の婚姻の有無はどうすることもできないことであり、そのことによって子供どうしの相続分が異なるのは明らかに不平等であると思います。今回、違憲とする高裁の判断が続いたことで、今後、改正の気運はより一層高まってくるでしょう。

 

非嫡出子の相続分を定めた民法規定は、法律婚重視の為にある程度の意義はありますが、法の下の平等を定めた憲法に明らかに違反しており、早期に改正すべきだと思います。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第7号
相続税を払う為に何坪売る必要があるのか?

 

1万坪の地主は、何坪売却すれば相続税が払えるのか? 下記に、過去20年間のその当時の最高税率による理論値をご紹介します。なお、控除額や仲介手数料等は考慮せず、公示価格=時価として計算しています。

 

平成2年当時
路線価の水準 = 公示価格×50%   売却する坪数 4400坪
譲渡所得税率   32.5%      残せる坪数  5600坪
相続税率     70%

 

平成4年当時
路線価の水準 = 公示価格×80%   売却する坪数 6600坪
譲渡所得税率   39%        残せる坪数  3400坪
相続税率     70%

 

平成5年当時
路線価の水準 = 公示価格×80%   売却する坪数 5600坪
譲渡所得税率   39%        残せる坪数  4400坪
相続税率     70%
※この年に取得費加算改正

 

平成11年当時
路線価の水準 = 公示価格×80%   売却する坪数 5600坪
譲渡所得税率   26%        残せる坪数  4400坪
相続税率     70%

 

平成24年
路線価の水準 = 公示価格×80%   売却する坪数 4000坪
譲渡所得税率   20%        残せる坪数  6000坪
相続税率     50%

 

過去20年間でいまが最も相続税及び贈与税が低くなっています。今後は、政府債務の増大+震災復興費+社会保障費の増大などにより、資産家にとっては受難の時代に逆戻りとなりそうです。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第6号
底地・借地の整理方法

 

相続税の節税などを検討する際、何かと問題になるものの一つに底地・借地の問題があります。借地権者から見れば、換価性は乏しいにもかかわらず相続税評価額は非常に高く、また底地権者から見ても、その収益性は低いにもかかわらず相続税評価額は高く、かつ換価性にも乏しい。まさに相続資産の問題児・・・。下記に底地・借地の一般的な整理方法をご紹介します。借地は売却する場合も、物納する場合も非常に時間と労力がかかります。そのため、資産の中で底地・借地権の割合が高い方は、事前の検討・対策が非常に重要となります。

 

@地主が借地権を買い戻す。

 

借地人が第三者に借地権を譲渡する場合は、通常、地主の承諾料(10%程度)が必要となりますので、その承諾料を考慮した価額で買い戻すことが可能となります。また完全な所有権となりますので、換価性の高い財産となります。

 

A借地人に底地を売却する。

 

借地人からすれば、更地価格×(1−借地権割合)という安価で購入する事が可能となります。完全な所有権となりますので、借地権が換価性・担保価値のある財産に変わります。

 

B底地と借地権を等価交換する。

 

借地権割合に応じて、借地人が借地権を返還し、地主がそれに見合う所有権を譲渡します。地主、借地人双方とも完全な所有権を取得することができます。また、交換比率を等価とするため譲渡所得税や贈与税は発生しません。

 

C底地を借地権を同時に第三者へ売却する。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第5号
相続人の一人からの預金口座の取引履歴開示の可否

 

最高裁判所平成21年1月22日判決は、複数の相続人の一人から被相続人名義の預金口座について、その取引履歴の開示を求める権利を単独で行使することができると判断しました。

 

この判決以前は、共同相続人全員からの請求でなければ開示に応じない金融機関もあり、一部の相続人の不協力によって相続財産の調査が困難な場合もありましたが、この判決によってその様な不利益が解消されました。以下に上記判決の一部をご紹介します。

 

「〜預金口座の取引経過は、預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから、預金者にとって、その開示を受けることが、預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに、金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。

 

したがって、金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。

 

そして、預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。〜」

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第4号
生命保険と特別受益

 

「死亡保険金は、原則として特別受益とはならない」と判断した最高裁判所の判決が平成16年10月29日に出されました。この判決が出たことによって生命保険を活用すれば特別受益財産の持戻し及び遺留分算定の際の基礎財産への算入を無制限に回避できると考えている方もいらっしゃるかと思いますが、この判決には例外となるケース(特別受益となり、遺留分算定の基礎財産となるケース)が以下のように記載されています。

 

「〜保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は特別受益に準じて持戻しの対象となる。〜」

 

上記によれば、生命保険金はすべて持戻しの対象にならないわけではなく、生命保険金を受け取った相続人と、受け取らなかった相続人の間の不公平が著しいとまでは言えない場合には持戻しの対象とはならない、ということになります。

 

以下に、生命保険と特別受益が争点となった判決をご紹介いたします。

 

最高裁判所 平成16年10月29日判決
相続開始時の相続財産の総額 約5900万円
生命保険金の総額      約570万円
相続財産に対する保険金割合 9.6%
判決結果・・・持戻しの対象とはならない。

 

東京高等裁判所 平成17年10月27日判決
相続開始時の相続財産の総額 約1億円
生命保険金の総額      約1億円
相続財産に対する保険金割合 約100%
判決結果・・・持戻しの対象となる。

 

名古屋高等裁判所 平成18年3月27日判決
相続開始時の相続財産の総額 約8400万円
生命保険金の総額      約5100万円
相続財産に対する保険金割合 約61%
判決結果・・・持戻しの対象となる。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第3号
平成23年度の相続税改正案

 

相続税の基礎控除

 

現行

 

定額控除  5000万円

 

法定相続人 1000万円に法定相続人数を乗じた金額

 

改正案

 

定額控除  3000万円

 

法定相続人 600万円に法定相続人数を乗じた金額

 

上記は平成23年度の相続税改正案です。当該改正案は国会の混乱等により改正が見送られている状態ですが、平成24年度税制改正大綱(下記)にも記載されているとおり、今後、改正に向けて議論が進んでいくものと思われます。上記案どおりに改正された場合、相続税を納めなければならない方が50%近く増加すると予想されています。

 

これまで相続税とは無縁だった方も、一度は、相続税額や相続税の節税などを検討されたほうがよいでしょう。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第2号
平成24年度 税制改正大綱(平成23年12月10日決定)

 

(1)相続税・贈与税

 

相続税・贈与税は、格差固定化の防止や、富の再分配の観点から、重要な税です。しかしながら、バブル期の地価上昇に対応した相続税の基礎控除の引き上げや、税率構造の累次の緩和等により、相続税が課せられる相続は、亡くなられた方100名に対して4程度にまで低下するなど、その再分配機能の低下が認められます。このため、相続税の負担の適正化が必要です。 〜中略〜 平成23年度税制改正では、上記の考え方に基づき、基礎控除の引下げを始めとする相続税の課税ベースや税率構造を見直す一方、子や孫などが受贈者となる場合の贈与税の税率構造の緩和、相続時精算課税制度の対象となる受贈者への孫の追加といった措置を盛り込んでいたところですが、国会における審議の結果、これらの改正事項については見送られることとなりました。本改正事項については税制抜本改革における実現を目指します。

 

どうやら近い将来、消費税、所得税と共に、相続税も増税されることになりそうです。残される家族が相続税で苦しむことがないよう、一度は改正案(増税案)によるシミュレーションをしておいたほうがよいと思います。

 

 

 

 

相続の最新情報!平成24年第1号
東日本大震災に伴う「調整率表」

 

国税庁は、平成23年11月1日に、東日本大震災の指定地域の県(青森県、岩手県宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県の一部、新潟県の一部、長野県の一部)で地価の下落を反映させるため「調整率」を発表しました。

 

この調整率が適用される方は以下のとおりです。

 

@平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する方が平成23年3月10日 以前に相続等により取得

 

A平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に相続等により取得

 

B平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に贈与により取得

 

上記期間内に取得した指定地域内にある土地等の評価については、路線価等に指定地域ごとに定められた調整率を乗じて計算することとされました。

 

上記に該当する方は、相続財産(土地)の評価が大きく下がる可能性がありますので、調整率適用の有無(評価減の有無)については、よく確認された方がよいと思います。

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