生前、被相続人に対し特別の働きをした場合の相続分
共同相続人中に、被相続人の財産の増加や維持に特別の働き(特別の寄与)をした者がある場合に、相続財産からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして各相続人の相続分を計算し、寄与者にその控除分を取得させることによって共同相続人間の公平を図る制度です。
1.相続人の中に、被相続人の事業を手伝った、金員などの財産の給付をした、病気を看病した、その他財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、その者の働きの評価額(寄与分)を共同相続人間で協議して決定し、その評価額を相続財産から引いた残額を「遺産」と仮定して相続分を計算します。
2.特別の働きをした相続人は、「遺産」の法定相続分にあらかじめ引いておいた評価額(寄与分)を加えた分が相続分となります。
3.寄与分の存在やその額について相続人間で話し合いがつかない場合は、特別の寄与をした者は家庭裁判所に審判を求めることができます。
4.家庭裁判所は、寄与の時期や、方法、程度、遺産の額などといった一切の事情を考慮して寄与分を決めます。
※寄与分の額は、相続開始時の財産の価格から、遺言により遺贈された価格を差し引いた額を超えることはできません。
(事例)
被相続人Aは5000万円の財産の残して死亡した。Aの相続人には、妻B、長男C、次男Dがいる。妻Cは、Aの看護を10年間行い1000万円の寄与分が認められる。
この場合の各相続人の具体的相続分は下記のとおりとなります。
(みなし相続財産)
5000万円−1000万円=4000万円
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(各相続人の一応の相続分)
妻B 4000万円×2分の1=2000万円
長男C、D 4000万円×2分の1×2分の1=1000万円
▼
(各相続人の具体的相続分)
妻B 2000万円+1000万円=3000万円
長男C 1000万円
次男D 1000万円
判例紹介:相続人の配偶者等による介護等により寄与分が認められた事例
平成29年 第8号
1.東京高等裁判所決定 平成元年12月28日
寄与分制度は、被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした相続人に、遺産分割に当たり、法定又は指定相続分をこえて寄与相当の財産額を取得させることにより、共同相続人間の衡平を図ろうとするものであるが、〜〜〜共同相続人間の衡平を図る見地からすれば、〜〜〜相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許されると解するのが相当である。
2.東京高等裁判所決定 平成22年9月13日
被相続人は、相続人Bの妻であるEが嫁いで間もなく脳梗塞で倒れて入院し、付き添いに頼んだ家政婦が被相続人の過大な要望に耐えられなかったため、妻Eは少なくとも3ヵ月間は被相続人の入院中の世話をし、その退院後は右半身不随となった被相続人の通院の付き添い、入浴の介助など日常的な介護に当たり、更に被相続人が死亡する半年の間は、被相続人が毎日失禁する状態となったことから、その処理をする等被相続人の介護に多くの労力と時間を費やした〜〜〜それ以外の期間についても妻Eによる入浴の世話や食事及び日常の細々とした介護が13年にわたる長期間にわたって継続した〜〜。
そして、妻Eによる被相続人の介護は、(Eの夫である)相続人Bの履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価でき、その貢献の程度を金銭に換算すると、200万円を下ることはないというべきである〜〜〜。
上記のとおり、相続人以外の者(相続人の妻、子、両親等)がした寄与行為につき、相続人自身の行為とみなせるような事情がある場合は、当該相続人の寄与分として主張できる可能性があります。
共同相続人間の衡平を図る観点から妥当な取扱いだと思います。
民法904条の2(寄与分)
@共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
A前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
B寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。
C第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。
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