相続不動産の評価方法

遺産分割の際に、不動産をどうやって評価したらよいか?

 

 相続財産の中に不動産がある場合、遺産を各相続人の具体的相続分に応じて公平に分配するためには、その前提として、相続不動産の価値を評価する必要があります。

 

相続財産の中でも、不動産は極めて高額であり、かつ一つとして同じものはなく、個別性が非常に強いため、遺産を分けるに際して、相続不動産の評価をめぐる争いが発生するケースも多く見受けられます。

 

そのため、相続不動産の価値をどう評価するかは、遺産分割をするうえで最も重要な部分であり、その評価には最大の注意を払う必要があります。

 

遺産分割をするうえでの、不動産の価格は「時価」、評価の時点は、「遺産分割時」です。なお、特別受益や寄与分が問題となる事案においては、「相続開始時」が基準となりますので、その際は、相続開始時の評価も必要となります。

 

 

不動産の鑑定評価業務について
不動産の鑑定評価とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう)の経済価値を判定し、その結果を価格に表示することをいいますが、当該業務を業として行うことができるのは、不動産鑑定業者の登録を受けた者(不動産鑑定士)に限られます。
不動産の価値について争い(裁判)となった場合、最終的には、不動産鑑定士による鑑定評価に基づき判断されることになります。
よって、適正妥当な価格に基づいて分割等をされたい場合は、裁判に至らない場合においても不動産鑑定士への評価依頼を検討されることをお勧めします。

 

 

 

第1 一般的な不動産の評価方法

 

取引事例比較法

 

相続不動産と「地域・形状・規模等」が類似の不動産が実際にいくらで売りに出されており、いくらで成約しているかを調査し、この成約価格をもとに相続不動産を実際に売れた不動産と比較して、相続不動産の価格を求めるもので、不動産の「市場性」に着目した評価方法です。通常、居住用宅地と居住用建物についてはこの方法で評価します。

 

この方法を用いて不動産の評価を行う場合は、まず査定地と地域や個別的要因等が類似した不動産で、既に成約となった事例地を選定します。
次に、この事例地の1u当たりの成約価格をもとに事例地と査定地の諸条件を比較し、査定地の1u当たりの単価を求めます。これに査定地の面積を乗じ、最後に市場性による調整を行って査定地の査定価格を算出します。

 

原価法

 

相続不動産と同等のものを現在造ったらいくらかかるかを調査し、これに対象不動産の減価修正を行って価格を求めるもので、不動産の費用性に着目した価格査定方法です。

 

収益還元法

 

相続不動産が収益用等に供されている場合、その収益から利回りを求めることによって不動産価格を算出するもので、不動産の収益性に着目した価格査定方法です。通常、収益用不動産についてはこの方法で査定します。

 

 

 

第2 相続不動産の評価方法

 

分割の前提となる不動産価格をいくらとするかは、上記の査定結果や、各相続人の諸事情等をもとに、原則として相続人全員による話し合い(分割協議)で決めることになります。
仮に協議がまとまらない場合、最終的には、家庭裁判所による審判で決めることになります。

 

以下に、主に不動産売却の際の価格査定に使用する「財団法人不動産流通近代化センターの策定した価格査定マニュアル」による価格査定の手順をご紹介いたします。

 

1 相続不動産が存する地域における成約事例の中から、できるだけ近くにあり、周辺環境・地形・地積等が似ており、かつ売り急ぎなどの個別的要因ができるだけない事例を「事例地」として選びます。

 

2 事例地の1uあたりの単価を算出します。

 

3 事例地と査定地のそれぞれの優劣を比較し、それぞれの点数(評点)を求めます。

 

以下に比較項目、点数(評価点)の目安をご紹介します。
※実際の評価点は諸条件により修正します。

 

最寄駅への所要時間による評価点(1分80m換算)
評価点の例
 〜5分   +10
〜10分   +5
〜15分    0

 

土地・建物の前面道路の方位による評価点
評価点の例
北      0
東     +2
南     +8
西     +1
南東角   +12
南西角   +10
北西角   +2
北東角   +3

 

土地・建物の前面道路の幅員による評価点
評価点の例
6m〜    +3〜
5m〜6m  +2
〜4m   0

 

土地のかたちによる評価点
評価点の例
整形地      +0
やや不整形地   −5
不整形地     −8〜

 

道路に対する土地の長さ(間口)による評価点
評価点の例
〜9m    +3
〜6m     0
〜2m    −5

 

排水施設の種類による評価点
評価点の例
公共下水    0
個別浄化槽  −2

 

周辺道路の整備等の状況による評価点
評価点の例
計画的で整然    +3
ほぼ整然       0
計画性なく無秩序  −3

 

周辺の騒音・振動による評価点
評価点の例
騒音なし・・40デシベル以下・・・・・  0
ややあり・・40〜50デシベル程度・・ −2
あり・・・・50〜60デシベル程度・・ −4
相当にあり・60〜70デシベル程度・・ −6

 

日照・採光の程度による評価点
評価点の例
優る・・・ +5
普通・・・  0
劣る・・・ −5

 

眺望・景観による評価点
評価点の例
優れる・・・+5〜+15
その他・・・ 0

 

その他の査定項目としては、ガス施設、水道設備、ゴミ処理場や葬儀場・暴力団事務所・墓地等嫌悪施設の有無、隣接地の利用状況、土地計画道路予定地、路地状敷地、崖地、高圧線、土地の高低差、土壌汚染などがあります。

 

 

4 相続不動産の査定価格を算出します。

 

最終的な価格を算出する際には、事例地が売却された時期と査定時の時差の時点調整や、査定地の規模・価格・査定時点の経済情勢などから、査定地が「売りやすい・売りにくい」などの市場流通性を反映させて調整します。

 

 

(相続不動産の評価レポート)

 

 

第3 不動産評価の公的基準

 

不動産に関する国が定めた公的価格として、地価公示価格、地価調査価格、相続税評価額、固定資産評価額があります。

 

これらの公的価格は、それぞれの評価時点での価格ですので、時価とは数ヶ月〜数年分のズレが生じます。通常、相場上昇時には時価より若干低く、相場下落時には時価より若干高くなる傾向があります。

 

 

 

1 公示価格(地価公示価格) 想定時価に対する割合・・100%

 

公示価格とは、地価公示法に基づき、国土交通省が定める特定の標準地について、毎年1月1日を基準日として公示する価格であり、毎年3月に発表されます。
この公示価格は、その土地について、自由な取引が行われた場合において通常成立するであろう価格、いわゆる「時価」を想定して定められています。

 

 

2 相続税評価額(路線価) 想定時価に対する割合・・80%

 

路線価とは、国が相続税・贈与税の課税をするために定めた価格であり、公示価格の80%相当になるよう定められています。
毎年、1月1日に評価替えを行い、8月上旬に公表されます。

 

 

相続税評価額の計算方法

 

(土地)
土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します。土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

 

路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。
路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。

 

 

(家屋)
固定資産税評価額に1.0倍して評価します。したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。

 

※賃貸されている土地や家屋については、権利関係に応じて評価額が調整されることになっています。
相続した宅地等が事業の用や居住の用として使われている場合には、限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。

 

 

(主な土地の評価方法・・相続税評価)

 

宅地
路線価方式・・・・路線価格×地積
倍率方式・・・・・固定資産税評価額×倍率

 

田・畑
純農地・・・・・・固定資産税評価額×倍率
中間農地・・・・・固定資産税評価額×倍率

 

市街地周辺農地
宅地であるとした場合の1u価格−1uの造成費)×地積×0.8

 

市街地農地
(宅地であるとした場合の1u価格ー1uの造成費)×地積

 

山林
純山林・・・・・・固定資産税評価額×倍率
中間山林・・・・・固定資産税評価額×倍率

 

市街地山林
(宅地であるとした場合の1u価格ー1uの造成費)×地積

 

原野・・・純原野
固定資産税評価額×倍率

 

中間原野
固定資産税評価額×倍率

 

市街地原野
(宅地であるとした場合の1u価格ー1uの造成費)×地積

 

貸宅地・・自用地としての価格×(1‐借地権割合等)

 

貸家建付地・・・自用地としての価格×(1−(借地権割合×借家権割合))

 

借地権・・・通常の地代・・・自用地としての価格×借地権割合

 

借家権付建物・・・その家屋の評価額×(1−借家権割合0.3×賃貸割合)

 

※賃貸割合・・賃借している各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計

 

 

3 固定資産税評価額 想定時価に対する割合・・70%

 

固定資産税評価額とは、固定資産税や登録免許税、不動産取得税等の課税標準とするために定めた価格であり、公示価格の70%相当になるよう定められています。
3年毎に、総務大臣の告示した固定資産評価基準によって、価格評価が行われます。

 

 

 

第4 相続不動産の評価を確定するための方法

 

これまで紹介してきたように、不動産は「一つとして同じものはなく」、「個別性が非常に強い」ため、その「時価」を算定することは容易ではありません。究極的には、市場に売りに出して、実際に売れるまで本当の「時価」はわかりません。出来るのは「時価」を推定することだけです。

 

さらに、相続人にもそれぞれの事情や感情、利害の対立がありますので、各相続人が自己の権利のみを主張すると、合意によって評価を確定することは極めて困難になります。
そのため、話し合いがこじれて調停・審判になり、遺産の10%〜20%の費用と約1年〜3年の期間をかけてようやく分割が終了するケースも多く見受けられます。

 

審判による分割の場合、節税を考慮しない、単に法定相続分に応じた分配となることがほとんどですので、話し合いによる分割協議と比べた場合その経済的損失は多大なものとなります。家族の絆と大切な財産を守るためにも、相続人間の譲り合う心が大切だと思います。

 

以下に相続人の合意によって相続不動産の評価を確定する方法をご紹介いたします。

 

まずはじめに、

 

固定資産税評価額、相続税評価額、地価公示価格、不動産業者の価格査定(売出価格ではなく最終的な成約予想価格)、必要に応じて不動産鑑定士の鑑定評価等、できるだけ情報を集め、各評価額を対比した上で、各当事者が合意できる可能な額につき検討します。

 

その上で、

 

1 不動産鑑定士の鑑定評価額で合意する。
2 相続税評価額で合意する。
3 相続税評価額の1.25倍で合意する。
4 各評価の差があまりない場合には、その中間値で合意する。
5 複数の価格がある場合は、その一番高いものと、一番低いものとをカットして残りの価格の中間値をとって合意する。
6 不動産を複数の相続人がほしがっている場合は、入札を行い、一番高い値を付けた相続人がその不動産を相続し、入札額をその不動産の評価額とする。

 

上記のほか、中立の立場の不動産鑑定士を選任し、あらかじめその鑑定結果を尊重することを記した合意書を取り交わした上で鑑定を行う。などの方法があります。

 

いずれにしても、最後は「互譲の精神」が大切だとおもいます。

 

司法書士・不動産コンサルタント 高良 実

 

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